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和室のある暮らし、この街。

年が明けてすぐに引っ越し作業が始まり、1週間前に築30年のマンションに引っ越してきた。

理由はさておき(気になる?)、私はこの部屋をすごく気に入っている。

昔ながらの畳がある和室と、リノベして少し新しめのキッチン。
このちょっと古めかしい、でも若々しさもあるこの部屋は、お気に入りのコップで日本茶とケーキを食べているような幸福感をもたらしてくれるのだ。


若者にこそ、和室のある暮らし

わたしの引っ越してきた地域は物件数が少なくて、なかなか良い場所が見つからなかった。

古い物件が多くて、若い人向けの築浅物件があまりない。
「紹介したくても、物件が無くて…」と不動産の人が言ってしまうくらいに。

若い人は、和室をあまり好まないらしい。
なんとなく使い勝手が悪いし、最近の家って感じではないし、理由は想像がつくけど、私としては若い人ほど和室のある暮らしは心地よく感じるんじゃないかなぁと思う。


鼻先をかすめる懐かしい畳の匂いとか、窓から日が差すと、サンルームのように光が満ちて優しく温かい雰囲気のお部屋になる。


ただ、我が家のようにこたつなんかを用意すると、毎日がお正月みたいになるので注意。
好きな本とお菓子とお茶を用意した時にはもう一生そこから出られなくなります。


ただ、常に時間に急かされるような若者こそ、この時間がゆったり流れてくれる和室が必要だと思う。


和室さえあれば、時間を増やすことはできないけど、ゆっくりにすることはできるのだ。


近所のコインランドリーを通るとふわふわする。

コインランドリーが大好きだ。

お布団をふわふわにしてくれるだけでなくて、お店の前を通ると柔軟剤の優しい匂いが気持ちまでふわふわにしてくれる。

あれは1番人を優しい心にしてくれる匂いで間違いないと思う。
あまりにもふわふわするもんだから、ちょっとだけ体も地面から浮いてる気がする。





話は変わるが、新卒1年目の時、この街に半年間だけ住んでいたことがあった。

住んでいた、といっても、社畜だったのであまり家には帰っていなかったし、仕事が辛くて苦い思い出ばかりがある街だったけど。


昔の家は駅近だったこともあって、自宅から駅に向かう時には必ず家の前を通ることになる。

この間の駅からの帰り道、前の家を見て、少し悲しいようなやりきれないような気持ちになっていた。
逃げるようにこの街から出た6年前、また戻ってくるなんて思ってもみなかった。
二度と住まない!なんて思っていたのがちょっと恥ずかしい。なんとあっさり戻ってきてしまったんだろう…。


夕暮れの時間帯だったことも相まって、なんだか少しセンチメンタルな気持ち。


そんな時に、コインランドリーの前を通るとあのふわふわの匂いが鼻をかすめる。





苦い思い出ばかりだったけど、こんなにいい匂いがするこの街は、そんなに悪いところばかりじゃないのかもしれない。



下ばかりみて歩いていたあの時には気づかなかったけど、近くにある川はキラキラしているし、野菜直売所のおばちゃんは良い人だし、駅前には好きなケーキ屋さん、家の近くには美味しいパン屋さんがある。

あの時とは違って、家に帰ったら大切な恋人と愛しの猫だって待ってる。

お風呂に入ったあとには、お気に入りの和室でこたつに入りながらアイスを食べようかなぁ。なんて考えながら、結局そのまま寝落ちする。




こう見たら、なかなか良い街だ。
今のわたしにとっては、なかなかに良い街。


きっと私はこれからもっとこの場所を好きになるんだろう。



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